「天風録」中国新聞から引用

「天風録」 2014年1月23日(木)
 ”瓦猿”という郷土玩具が和歌山にある。江戸時代に瓦職人の内職から始まったという。写真で見ると両足ですっと立つ。「安産」や「子授け」から、「お家安泰」まで背負って。何せ「変わらざる」である。
 「頑固で部厚ではあるが、色彩的で、それもけばけばしくない」。
戦前の作家田端修一郎は、郷里の石州瓦をこう評している。低いマツ山の間に赤い屋根が点在する風景に石見らしさを思ったという。
 高温で焼き締めるため雨水が染みにくく、凍結に耐える。適した粘土にも富む土地柄。明治になって農家が、「わら」や「カヤ」から屋根替えすると、いよいよ出番。釉薬の成分に由来する赤は安芸の西条辺りまで版図を広げた。
 今は「変わらざる」を得ない時代だろう。出荷量は20年前の3分の1以下。本来かさむ燃料費に高騰のパンチも食らう。太田市のメーカーが先ごろ、民事再生法の適用を申請した。洋風瓦に乗り遅れたと、社長は弁明した。
 ”土器”と書いて”かわらけ”とも読む。素焼きの器が瓦の始まりだろうか。先人の知恵と技の「焼き締め」が土くれを変化させたと思えば、エールを送りたい。「頑固」でいいけれど、柔軟な発想で新分野にも桃まれんことを。
◎(天風録)2日目、3日ぼうずにならないように頑張ります。
◎ 都知事選今日告示。