「天風録」 中国新聞から引用

「天風録」 2014. 2. 25 (火)
 ビル風はまだ肌寒いものの、日なたにいると襟首の辺りがほんのり温かくなる。身を縮めていたつぼみも、どうやら目を覚ましたらしい。広島市の名勝、縮景園の梅林が見ごろを迎えている。
 きょうは学問の神様、菅原道真の命日という。京の都を追われた道真を慕い、梅の木が主の元へ飛んだ伝説が今に残る。「東風吹かば匂ひをおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」の歌は受験生にもおなじみであろう。
 それと伝わる木を守り続ける福岡の太宰府天満宮は、境内の梅すべてを「門外不出」としてきた。1111年目の道真忌を迎えることし、禁を破る。大震災でほぼ半分の学びやをなくした福島県立福島高に、接ぎ木していた若木5本を贈るという
 解禁に踏み切った宮司は、被災地の支援に何度も入ってきたと聞く。風雪を耐え忍んだ春だからこそ、花は咲くー。そんな言いづてを飛梅(とびうめ)に託したかったのかもしれない。今度は西から東へと約1400キロに及ぶ新たな伝説が始まろうとしている。
 福島高の校章が梅の花をかたどっているのも何かの縁に違いない。「春を忘れてくれるな」という福島の願いにどう応えるか。こちらの動きも問われている気がする。