「天風録」 中国新聞から引用

「天風録」 2014. 2. 22 (土)
 「あげ過ぎかな」。米大リーグのダルビッシュ投手の一言が物議を醸した。弟分のマー君ヤンキースと結んだ契約額について会見で問われたときのこと。笑顔をテレビで見ると、ジョークと受け取れる。
 コメをはじめ日本の農産物を守るには、TPP交渉からの脱退も辞さない。そう定めた国会決議を「冗談で書かれたものではない」と気勢を上げたのは、自民党石破茂幹事長である。JAの集会に鉢巻姿で現れた。
 交渉のヤマ場となる閣僚会合がきょうからシンガポールである。米国が言い分を変えず、日本側は腰がぐらつき始めている。数日前に石破自らも「一センチたりとも動かない、では難しい」と述べていた。一体どちらが本音なのかと勘繰りたくなる。
 海外には、こんなジョークがあるらしい。グローバル化とは日本の子供の夢がメジャーリーガーになることー。それはそれとしてTPPで日本産のコメが消えるという悪い冗談が現実のものになっては困るのだが。 
 ダルビッシュ投手は「分かるでしょう」と言いたかっただろう。TPP交渉で日本の主張が通らなくても国民は理解してくれる。政府や野党が高をくくれば、こちらは冗談では済まない。