「天風録」中国新聞から引用

「天風録」 2014・1・25(土)
 決まり文句の類には、「こともある」と付け足す方が真実に近づく。「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」こともある、というふうに。高校の頃に教わり、体育会系でない身には肩の荷が下りた気がしたものだ。
 さて、「やればできる」である。安部晋三首相のマイブームらしい。きのうの施政方針演説では都合4回も繰り返した。ねじり鉢巻きの受験生には、プラス思考の、またとない励ましと聞こえたに違いない。
 一回り前の午年にノーべル物理学賞を受けた小柴昌俊さんの自叙伝が「やれば、できる。」とあるのは偶然だろうか。日本人は物おじするな、底力に自信をを持てーと小柴さんは後輩にエールを惜しまない。「世界一」好みで昨年、今年と演説で連発した首相も気が高ぶった一人では。
 英語に直せば、6年前の米大統領選で若きオバマ氏が連呼した「Yes we can」である。歯切れの良い決めぜりふは国民一人一人を巻き込む「we」が工夫だった。
 はて、首相にとって「we」とはいったい誰なのだろう。演説で集団的自衛権も口にした。今度ばかりは「やれば、できることもある」と面白がるだけでは済みそうにない。なんとも悩ましい。

 ※ 集団的自衛権
 集団的自衛権(しゅうだんてきじえいけん)とは、他の国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利である。 ...
  ※「Yes We Can
  「わたしたちはできる」