「天風録」 中国新聞から引用

「天風録」 2014. 2. 21(金)
 何年か前に1本の大根が名をはせた。アスファルトを突き破って顔を出し、あっぱれ「ど根性」と評される。泥まみれのイージが漂う言葉である。表彰台から晴れやかな笑顔ふりまく女性には、似つかわしくなかろうに。
 「ど根性ボーダー」銀メダル。スノーボード大回転、竹内智香選手の快挙はそう伝えられた。若くして芽を出し、高校3年から五輪に出続ける。順調な競技人生と思いきや、がむしゃらに成長を求め、もがいてきた。
 日本の競技環境では力は伸ばせないー。焦りもあって2007年から拠点を国外へ。強豪スイスの合宿に加えてと直談判し、5年ほど武者修行した。ドイツ語を学びチームにも溶け込む。だが五輪3回目は13位だった。
 北海道で育ち、国内外で養分を蓄えた。開花のきっかけは4年前から訪れている第二の古里広島の水だろう。しまなみ海道を自転車で走ったり、尾道の寺で心を鍛えたり。そんな体験も殻を破る一助だったに違いない。
 ブログをのぞくと、原爆の日に抱いた思いや、スポーツと平和についての考えがつづられていた。選手として人間としてのも幹の太さがうかがえる。あすパラレル回転でもう一輪。輝かしい花を見たい。