「天風録」 中国新聞から引用

「天風録」2014. 2. 19 (水)
 アレルギー性肉牙腫性血管炎は,チャーグ・ストラウス症候群とも呼ばれるらしい。どちらにしても大方の人には初耳の難病だろう。その可能性があると、ジャンプの竹内拓選手が診断された。
 男子団体で銅メダルをつかんだ直後に自ら明かした。「同じ病気に苦しんでいる人に元気を与ええたいと思って飛んだ。念じれば、かなう」と。K点越えを連発した後だけに現地の記者たちも「寝耳に水」だったようだ。
 120万人に1人とされる。原因は分からない。手足がしびれ、筋肉はそげ落ちる。「結果を出してから公表しようと思っていた」。どんな成績に終わっても病気のせいにはしない。投薬による吹き出物が目立つ顔に、そんな決意を秘めていたとは。
 でも、もしも失敗してたら・・・。愚痴はこぼさず、批判を浴びる覚悟だったに違いない。そこまで彼を追い詰めたのは、長野五輪から長く続いたジャンプ陣の暗いトンネルのせいか、国民の期待というプレッシャーか。
 自画自賛めくが、きのうの夕刊の見出しで合点がいった。「四つの翼信頼リレー」。孤独と不安に勝るものをほかの3人から得ていた。それが遠くへ飛ぶ風を呼んだ。きっと、そうなんだ。